「あれ、あの件どうなってる?」が口ぐせになっていませんか
小さな会社には、大きな会社にはない強みがあります。お客様から連絡が来たら、すぐ動ける。担当を分けるまでもなく、その場で「じゃあ私がやっておきます」と話が決まる。この身軽さは、何ものにも代えがたい財産です。
ただ、その軽やかさの裏で、こんな会話が増えてはいないでしょうか。「あれ、あの件どうなってる?」「えーと、たしか先方の返事待ちだったような……」。
案件のことは、たいてい誰かの頭の中に入っています。そして、その頭の中をのぞかないと、今どうなっているのかが分からない。それが当たり前になっていると、案外、気づきにくいものです。
頭の中で覚えている、は限界がくる
頭で覚えておく、というやり方は、案件が数件のうちはうまく回ります。問題は、件数が増えたときです。
連絡を返したつもりが、返していなかった。次にやるべきことが、誰の担当か曖昧なまま止まっていた。人によって進め方や書き残し方がバラバラで、いざ引き継ごうとすると、何がどこにあるのか分からない。──こういう「あるある」に、心当たりはありませんか。
これは、誰かがだらしないから起きるわけではありません。「案件を頭の中で覚えている」という状態そのものが原因です。人の記憶には限りがあります。人数が増え、案件が重なれば、どんなに優秀な人でも、いつかは必ず取りこぼします。
案件管理がやることは、たった3つ
「ちゃんと管理しなきゃ」と思うと、つい身構えてしまいますよね。でも、難しく考える必要はありません。
業務がどんなに複雑に見えても、案件管理がやることは、突き詰めればこの3つだけです。
ひとつ、今どこにいるか。その案件は、入口から完了までの、どのあたりにいるのか。ふたつ、次に何を、誰がやるか。いま手を付けるべきことは何で、それは誰の番なのか。みっつ、いつまでか。その締め切りはいつなのか。
たったこれだけ。逆に言えば、この3つさえどの案件についても答えられる状態になっていれば、もう案件管理はほとんどできている、と言ってもいいくらいです。
「いま、ボールを持っているのは誰?」
3つの問いのなかでも、現場でいちばん効くのが「次は誰の番か」です。
特に、社外の協力先やお客様とやり取りしながら進める仕事では、案件が宙ぶらりんになりがちです。「先方に投げたつもり」「いや、こちらの返事待ちだと思っていた」。お互いが相手の番だと思い込んでいるあいだ、案件は静かに止まっています。
そこで、各案件に「いま、ボールを持っているのは誰か」を一行書いておく。自社なのか、お客様なのか、協力先なのか。キャッチボールで、いま手元にボールがあるのは誰か、を札に書いて貼っておくようなものです。これだけで、「あれ、どっちの番だっけ」が驚くほど減ります。
冷蔵庫のカレンダー、という考え方
前回、「ITの道具を迎える前に、まず冷蔵庫の中身を全部出して確認しましょう」というお話をしました。自分たちの仕事に、いま何があるのかを見える形にする、という棚卸しのお話です。
今回はその続きとして、冷蔵庫の「扉」に目を向けてみます。
ご家庭でも、家族の予定をそれぞれが頭の中だけで覚えていたら、きっとあちこちでぶつかりますよね。だから多くのお宅では、冷蔵庫の扉にカレンダーを貼って、家族みんながそこを見るようにしている。誰がいつ何をするか、一枚を見れば分かる。
案件管理の本質も、まったく同じです。立派なシステムを入れたかどうかではありません。全員が、同じ一枚を見ているかどうか。それだけなのです。頭の中にあった情報を、みんなが見られる一枚の上に移す。これが、いちばん大事な一歩です。
背骨が1本通っていれば、道具は何でもいい
「でも、そのための仕組みを作るのは大変なのでは」と思われるかもしれません。ここで、もうひとつだけ、肝になる考え方をお伝えします。
それは、案件にひとつずつ番号を振り、その番号を背骨にすることです。たとえば一覧表(台帳)にも、書類をしまうフォルダにも、同じ番号を付けておく。そうすると、表で案件を見つけて、同じ番号のフォルダを開けば、関係する書類にすぐたどり着けます。
表が、案件の今を映す「司令塔」。フォルダが、書類をしまう「書庫」。そして案件番号が、その二つをつなぐ背骨です。背骨さえ通っていれば、使う道具は、無料で手に入るありふれたもので構いません。みんなで同時に書き込める一覧表、外出先からスマホでものぞける置き場。それで十分回ります。お金をかけることが目的ではないのです。
まずは2〜3件、貼ってみるところから
最初から完璧な仕組みを作ろうとすると、たいてい途中で息切れします。
おすすめは、いま動いている案件を、まず2〜3件だけ、その一枚に書いてみることです。一、二週間ほど実際に使ってみて、「この欄はいらない」「これも書いておきたい」と、現場の声で少しずつ直していく。完成図を先に描くより、小さく始めて、使いながら育てるほうが、結局は長く続きます。
前回、「自分の手で食材に触れ、小さなスケールで試してみる」というお話をしました。今回も同じです。難しいことは何もありません。冷蔵庫の扉に、まず一枚、貼ってみる。家族みんなが、いえ、職場のみんなが、同じ一枚を見るところから始めてみてください。それだけで、「あの件どうなってる?」が、ずいぶん静かになるはずです。
本コラムは、日々の支援現場で数多くの小規模事業者の方々と向き合う中で感じてきたことをもとに書いています。文章の構成・整形にはAIを活用していますが、内容はすべて実際の支援経験に基づくものです。