2026.04
点群データ(LAS)を、A4横1枚の提案資料に。
デジタルツイン・iPhone LiDARの3次元データを、誰にでも伝わる図に変換
「立体データはあるのに、説明資料が作れない」というもどかしさ
最近、点群データ(建物や地形を多数の点で立体的に記録した3次元データ)を手にする機会が増えています。東京都が公開している「デジタルツイン実現プロジェクト」では、東京都内の建物形状が LASファイル という標準形式で誰でもダウンロードできますし、近年のiPhone Pro/iPad Proに搭載されたLiDARセンサー(光で距離を測るセンサー)でも、屋根や室内、敷地形状をその場でLASデータとして取得できます。ドローンで撮影された点群データも、出力形式は同じくLASです。
ところが、せっかくこうした立体データが手元にあっても、「お客様にお見せできる1枚の提案資料」に落とし込む工程は、いまだに手作業というケースがほとんどです。専用のCADソフトで開いて、必要な面を選び、寸法を測り、PowerPointに貼って、注釈を入れて——。「データはあるのに、提案に使えない」というもどかしさを抱えている方は少なくないのではないでしょうか。
このシステムは、その「データ → 提案資料」の橋渡しを自動化する仕組みです。LASファイルを渡せば、必要な面の抽出から、寸法線・方位・サマリ表記つきの A4横1枚のPowerPoint資料 までを自動で生成します。
太陽光パネルの提案を、最初の事例として構築
最初の活用事例として構築したのが、太陽光パネルの搭載枚数を概算するレポートです。住宅の屋根の点群データから、屋根面ごとの方位・勾配・面積を自動で読み取り、「南面に8枚 / 北面に6枚 / 計14枚 / 約6.16kW」といった概算値と、屋根平面図・パネル搭載イメージ図を1枚のスライドにまとめます。
施主との初回打ち合わせで「うちの屋根、何枚くらい載るんですか?」と聞かれたとき、感覚値ではなく根拠のある数字をその場でお見せできる。そんな営業現場の課題から生まれた仕組みです。
ただし、本システムの本質は太陽光に限りません。点群データから「面を抽出して」「寸法を取って」「1枚の図面に整えて」「定型のサマリと一緒に出力する」という一連の工程は、用途を選びません。
Before / After
Before:手作業で資料を作る
- 専用CADソフトで点群を開いて必要な面を選別
- 寸法・面積を電卓やExcelで集計
- PowerPointやIllustratorで図を手書き
- 案件ごとに作り方がバラバラで属人化
- 同じような提案でも毎回ゼロから組み直し
After:データを渡すだけ
- LASファイルを入力するだけで自動処理
- 面の抽出・寸法取得・サマリ集計が自動
- A4横1枚のPowerPoint資料が自動生成
- レイアウト・配色・注記が定型化され均質
- テンプレートに案件情報を渡すだけで再利用
仕組みの流れ
「テンプレート」と「案件ロジック」を分けて再利用しやすく
このシステムの核は、「毎回同じ部分」と「案件ごとに変わる部分」の責任分界をはっきり分けたことにあります。
レイアウト・配色・寸法線の自動配置・北矢印・スケールバー・標準注記文・出典表記といった「毎案件で同じ部分」はテンプレート(再利用可能な共通プログラム)に固定。一方、「対象とする面の選び方」「どんなオブジェクト(パネル、設備、植栽など)を配置するか」「サマリにどんな項目を載せるか」といった「案件ごとに変わる部分」だけを、データクラスとスクリプトで渡す形にしました。
これにより、最初の太陽光案件で投資した開発を、次の案件以降は大きく流用できます。新しい案件のたびにゼロから作り直すのではなく、テンプレートを呼び出す数十行のスクリプトを書くだけで対応できる構造です。
応用が効く事例
太陽光以外にも、点群データを使った「1枚もの」の提案資料化はさまざまな用途で応用できます。以下はあくまで一例で、ご相談いただければ業種に合わせて具体化していけます。
- 屋根リフォーム提案:屋根面の面積から、塗装・葺き替えの概算面積と材料数量を算出した1枚資料
- 外構・駐車場プランニング:敷地の点群から、駐車スペースの配置数や形状の代替案を視覚化
- 室内レイアウト提案:iPhone LiDARで取得した室内点群から、家具・什器の配置イメージを1枚に
- 太陽光カーポート・倉庫屋根:住宅以外の建物にも同じ仕組みを横展開
- 空き家・遊休地の活用提案:敷地形状から複数活用プランを並べた比較資料
得られる効果
説明できるレイアウト
見栄えが揃う
開発負担を大幅軽減
自動記載
利用に必要な環境
このシステムはPython(プログラミング言語の一種)とNode.js(JavaScriptを動かす環境)で動作します。点群データの入手元は問いません。東京都デジタルツインのオープンデータ、iPhone/iPad Pro のLiDARセンサーで取得したデータ、ドローン撮影の点群、業者から納品された測量データなど、LASファイルとしてエクスポートできるものであれば対応可能です。
出力される資料はあくまで初期提案・概算用のイメージ図です。実際の施工や契約に進む際には、別途、現地調査・構造計算・法令適合性のチェックが必要になります。「初期提案フェーズに特化した、伝わりやすい1枚」という位置づけでご活用ください。
技術的なポイント
「最小外接矩形(MBR)」で見栄えを整える
点群から取った面の輪郭は、ふちがギザギザになりがちです。そのままだと提案資料として違和感があるため、点群を囲む最小の長方形を求めて輪郭としています。本来の形状(おおむね長方形)に近いイメージ図に整い、寸法線も長辺・短辺方向にきれいに引けます。
配置は「見栄え優先」で固定パターン
たとえば太陽光パネルなら、少しでも多く載せようと角度を細かく探索することもできますが、このシステムは意図的に「対象面の長辺に平行・中央配置」で固定しています。施工現場の標準的な並べ方に合わせており、寸法線とオブジェクト列が揃って資料として圧倒的に見やすくなります。「最大値」より「現実に並ぶ姿」を優先する設計思想です。
SVG経由でPowerPointへ
図面はまずSVG(拡大しても劣化しないベクター形式)として組み立て、それをPowerPoint用ライブラリ経由で .pptx に変換します。日本語フォントの埋め込みや複雑な図形配置に強く、お手元のPCで通常どおり編集・加筆できるファイルとして納品されます。
こんな方に向いています
点群データを扱う機会があり、それをお客様向けの説明資料に変換する工程に時間を取られている方、「データ → 提案」の流れを社内で標準化したい方、特定の業務(太陽光、リフォーム、外構など)について、案件ごとの資料作成を仕組み化したい方におすすめです。最初の案件は太陽光のように具体的なお題でスタートし、二案件目以降は同じ基盤を流用していく、という進め方が現実的です。
一方で、施工図面そのものや、構造計算・法令チェックを目的とする資料には別アプローチが必要です。本システムは「初期提案・概算・説明」のフェーズに特化しています。
「うちでも使える?」と思ったら
御社で扱っている点群データの種類(デジタルツイン由来、iPhone LiDAR、ドローン、測量等)と、
お客様にお見せしたい資料のイメージをお聞かせください。
最初の事例として何を作るか、どこまで自動化するかを一緒に組み立てていきます。